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旅の起点、東海道五十三次”品川宿”のストーリーを受け継ぐブックカフェ『KAIDO books & coffee』

2015年10月5日

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旅の起点、東海道五十三次”品川宿”のストーリーを受け継ぐブックカフェ『KAIDO books & coffee』

人通りの多い大きな道から、ふと脇道に入ったとき、地元の人しか知り得ないような店や場所に巡り会えた経験はないだろうか。それはたまたま出会ったのかもしれない。もしくは、あらゆる情報を頼りに目的地を探していた時かもしれない。「こんな所があったのか!」というあのワクワク感は、何度味わっても格別に感じるものだ。

そんな「誰もが知っている」ではなく「知る人ぞ知る」、ツウな視点で楽しむ旅を提案してくれるのが、2015年8月6日品川にオープンしたブックカフェ『KAIDO books & coffee』だ。

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▲KAIDOを表す「道」「本」「コーヒー」モチーフにしたロゴ

KAIDOは品川駅から徒歩15分、新馬場駅から徒歩5分の商店街の中にある。そこはかつて「東海道五十三次、1番目の宿場町“品川宿”」として、全国各地の大名や著名人、幕末の志士達が江戸に入る前に旅の疲れを癒したり、旅支度を整えたりと、現在の新宿や渋谷に匹敵する繁華街だった場所と言われている。

今でもその歴史ある面影は、建物や「創業宝暦11年」などと書かれた、代々受け継がれてきた木製の看板から感じ取ることができる。

新旧の歴史が入り交じる街、品川の「街づくり」

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▲株式会社しながわ街づくり計画代表・佐藤亮太

歴史深い品川という街に「全国の旅への拠点となるお店」としてKAIDOを立ち上げたのが、株式会社しながわ街づくり計画代表の佐藤亮太さんだ。

生まれ育ちが品川で「将来は自分の街に関わる仕事がしたい」という想いを胸に、前職である広告代理店に入社した。その後独立し、品川という地域のPRをメインに観光協会とのタイアップや、独自での観光PRを行っている。

一言で「何の仕事をしているのか?」を言い表せないほど、『街づくり』という活動は多岐に渡っている。

「街づくり」と言われて最初に思い浮かぶのは、建物を建てたり、都市計画を立てたりといったハード面のこと。しかし、しながわ街づくり計画の街づくりはソフト面でのサポート支援だ。

例えば、防災のコーディネーター。大企業をいくつも構える品川だが、町会や商店街といった下町ならではの組織もしっかり健在している。しかし、それぞれの目的や価値観が異なるため、見ている方向がなかなか一方向に定まらないのだという。

そこで、「防災」という1つのキーワードで意思疎通を図ったり、ワークショップやイベントを行いながら、1つの地域を安心安全に導いていく働きかけだ。他にも品川宿の歴史ある街並みを整備していく取り組みや、大きい再開発に向けて景観のアドバイスなども行っている。

品川特有の様々な人間関係が渦巻く中で、情報の伝え方や内容の企画など含め、しっかり相手に伝える、といったことに重きを置く街づくり会社である。

ちょっと目線を変えた旅を

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KAIDOに欠かせないのが、古書1万冊の蔵書主であり、長い走り旅「ジャーニーラン」のレジェンド的存在の田中義巳さん。もともとは公務員だが、現在は旅の起点である品川で道や地域に関連した蔵書を取り扱う古書店「街道文庫」の店主である。

現在の「街道文庫」は、街道沿いではない外れで、本をびっしり詰めた倉庫のような場所となっている。佐藤さんは街づくりの活動の中で田中さんに出会い、知識や所有する本の素晴らしさから田中さんに声を掛け、協力を仰いでKAIDObooks&coffeeを作り上げていった。

店のコンセプトは「地域の歴史や風土を学べるお店」。ガイドマップをパラパラめくって「行ってみたい」と思うだけでなく、「じゃあ行く前にこういうのも読んでみませんか?」と提案するのだ。普段はなかなか手に取らないような書籍と一般の本屋にもあるような雑誌やビジュアル本を並べ、併せて手に取ってもらえる工夫をしていく。例えば山の本と「修験道修行入門」という本。

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なぜ、あえてこの本を選んだのか?佐藤さんに理由を聞いてみた。

「今、観光として、山形県の出羽三山で山伏体験をするものがあるんですね。山梨県の身延山という山でも修験道の方がいらっしゃったりします。それが最近一部の人たちの間で話題となっていて、そもそもなんでやってるのかって疑問に思ったんです。

たまたまそれに関する本を読んでいたら「あーなるほどなー」と納得して、本で読んだことを意識しながら山を登ってみたら変化を感じたんです。普通に登る時より、楽しく登れるような目線に変わりました。

『目線が変わる』って旅をしていく中での楽しみじゃないか、というのが僕の考えで。目線が変わるような気付きなどを、お店でお客さんに提供できたらいいなと思っています。

知識があってから行くのとなくて行くのとでは、見え方やその場所に対しての理解が全然違いますよ。」

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▲一般に出回らないような自費出版された貴重な本も

「会員特典ですが「こういう本ない?」という希望があっても、もしお店になかったら頑張って探します!ない場合は市区町村に連絡し、お店のコンセプトを話して、関連する本の情報を送ってもらえないか、とお願いしています。

希望が多くなりすぎると対応できなくなってしまうんですが、今の内はお店を充実させる意味でもできる限りやりたいですね。僕らも勉強になることが多いんですよ。

この間は「八戸のコミュニティについて教えてくれ」と言われて調べてみたら、おもしろいネタが見つかりました。本じゃなくても「こんなイベントやってますよ」とWebページをお伝えすることもあります。」

行きたい地域の本を借りられて、相談すればそこにまつわる情報を調べてくれる。普段の旅とは目線を変えて、旅を始めたい人にとってはありがたい場所になりそうだ。

実際に店を利用するお客さんは旅を目的にしている方の他にも、作家活動している方が資料集めとして訪れることも。読みかけの本を置くスペースがあるので、また来ようと思える仕組みにもなっている。ちなみに気に入った書籍は購入することもできる。

本当の地域らしさを伝える企画展示を

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▲8月に企画展示されたのは、長野県飯田市

1階スペースでは毎月、様々な地域をピックアップした企画展示を開催している。展示する地域へは、佐藤さんやスタッフが取材訪問、もしくは電話取材を行う。自ら得た情報を元にし、時には地域や企業と連携した展示を作り上げていくという徹底ぶりである。

選ぶ地域は、スタッフの故郷やプロジェクトの仲間、友人らが精通している場所から取り上げている。8月の展示は、佐藤さんの友人が観光科に勤めているという長野県飯田市。

飯田市の物産展を行ったお付き合いもあり、KAIDOを始める際も「まず飯田市からやりましょう」と真っ先に名の挙がった場所だ。ちなみに飯田市は11月にも展示することが決定しており、今後も定期的に行われる予定だ。

「何かを始める時、勝手にこちらでやるより、一緒に仲間としてやっていったほうが絶対おもしろいものができます。僕らだけの目線からでは、その地域のおもしろいものってなかなか出てこなくて。

そこに住んでいる人たちが「自分たちの見せたいもの」という形で紹介してくれるのが本当におもしろいんです。自分たちだけではこんなの探せなかったな、というのを感じています。このような形で、これからも知人やその紹介から繋がりを広げて一緒にやっていく予定です。」

9月の展示はジーンズストリートがある、岡山県倉敷市。倉敷市の特集となると、必ずジーンズが取り上げられるほど、デニムの街として有名だ。しかし、かつては畳縁の産業が栄えた街だったことをご存知だろうか?

畳縁のような厚い生地を縫製する技術は、その後学ラン作りに活かされた。戦時中から着用されていた学ランのほとんどが倉敷市で作られたものだったという。学ランを作っていた人々がやがて、ジーンズを作るようになり、現在は倉敷帆布という帆布も生産するようになった。

今大きく取り上げられているものよりも、前の背景から読み取り、第3者目線ではない、その地域で暮らす人々から発信されているものこそ、本当の地域らしさを伝えられるのではないか。企画展示には、そんな想いが込められている。

9月は企画展示の他にも、倉敷の備前焼にまつわり、陶芸家を呼んだ陶芸教室も開催された。年内には毎週イベントを開催できるように準備中だ。

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▲ジーンズでできたエプロンも倉敷市で作られたもの

タイアップと協賛に「TRANSIT」「イトーキ」「品川白煉瓦」

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10月の企画展示は世界の旅雑誌「TRANSIT」とタイアップし、滋賀県長浜市を取り上げる。長浜市は彦根市の上に位置する市で、長浜城が有名だ。豊臣秀吉が初めて築いた城で、全国統一した後に1度廃城した。

世界の旅を扱う「TRANSIT」だが、ここ最近は日本の旅も少しずつ紹介している。10月末に発行する号で長浜市を特集することになり、KAIDOでは発行に合わせた企画展示を行う。

「旅をコンセプトにしているお店、ということでTRANSITさんに気にしていただいていたのと、僕らも旅をコンセプトにするからには旅をコンセプトにしている媒体を置きたい、と思っていたこともあり、紹介していただきました。

TRANSITさんって売り切り御免で発行しているので、編集部にも在庫が残っていないんですよ。唯一残っていた号を集めてくれて、在庫がないものは展示だけやっています。」

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タイアップだけでなく、地域や企業からの協賛もある。例えば壁を埋め尽くす本棚。山梨県早川町という、日本で1番人口の少ない町とオフィス家具メーカーのイトーキが協力して作ったオリジナル。

イトーキはオフィス家具メーカーだが、これから商業家具を作っていくにあたり、その実験の場としてKAIDOを選んだ。棚は2種類あり、山梨と東京奥多摩の間伐材を使用している。

また、1階のキッチンに敷かれている白くてきれいなレンガ。こちらも協賛。「耐火レンガ」という、鉄工所などで使うレンガで、強度がとても強い。この耐火レンガを日本で最初に作ったのが「品川白煉瓦」という会社だった。

品川を紹介していく上で、品川白煉瓦の存在は大きいと感じ、お店で品川白煉瓦のPRをしたいと相談したところ、レンガを協賛していただいたとのこと。白レンガのお陰で店内も明るく感じる。本棚もレンガも、KAIDOには無くてはならない存在になっている。

「And Coffee Roasters」と全国各地のコーヒーを味わえる

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KAIDOに欠かせないのコーヒーにももちろんこだわりがある。店長の下司さん、実は熊本県にある今注目の「And Coffee Roasters」を立ち上げた2人の内の1人。下司さんは東京出身で、東京に戻ろうとしたタイミングでKAIDOの店長に。

下司さんの兄が、プロジェクトメンバーだったことがきっかけだ。こうして「And Coffee Roasters」の豆は常設にし、比較するような形で全国各地焙煎所の豆を試せるようになっている。ロースターが変わるだけで、同じ豆でも焙煎度合いやブレンドによって全く違うものになる。

日本全国、たくさんの人々の想いが詰まったブックカフェ『KAIDO books & coffee』。品川宿という日本の旅の起点だったというストーリーを引き継ぎ、新しい旅のスタート地点として産声をあげたばかり。2020年東京オリンピックに向けて、さらにこれから日本に注目が集まっていくだろう。

「これからもっと”日本の良さ”というのを見直してもいいんじゃないか。」

そんな佐藤さんやKAIDOに関わる全ての人たちの想いを、直接店に訪れて感じて欲しい。

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【KAIDO books & coffee】

住所:東京都品川区北品川2-3-7
営業時間:10:00〜22:00
電話:03-6404-6388
オフィシャルサイト:http://kaido.tokyo/

【KAIDO会員】

年会費:¥3,000
初回登録費:¥2,000
会員特典:1ドリンクチケット(初回のみ)、本の貸出(古書のみ)、本のリクエスト、イベント開催時に優先してお知らせ(任意)
※登録の際、身分証明書の確認あり