CAMPFIRE MAGAZINE

挑戦者の声なき声を、小さな火を灯しつづけるCAMPFIREのオウンドメディア

ファンとアーティストがSNSで繋がり再始動。S-WORD×エレメンツが仕掛ける新ブランド「NITXIII (ナイトデルタ)」への想い

September 17, 2015

News

続きを読む
ファンとアーティストがSNSで繋がり再始動。S-WORD×エレメンツが仕掛ける新ブランド「NITXIII (ナイトデルタ)」への想い

突然の活動休止から数年。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのメンバーでnitraidのデザイナーでもあったS-WORDと、彼らの長年のファンで「エレメンツ」のメンバー・ICHI-ROWが新しくブランドをスタートさせる。その名も「NITXIII」。

「ファンとデザイナー」が共同で立ち上げるという、前代未聞の再始動の裏にはどのようなきっかけがあったのだろうか? 彼ら二人に、始動の背景とブランドに対する思いを尋ねた。

殿様商売ではなく、ブランドから歩み寄り、情報を届けること。

ー活動休止期間はブランドについて、どんな思惑を巡らせていましたか?立ち上げまでの流れを教えて下さい。

S-WORD)nitraid(ナイトレイド)に関しては、僕はクリエイティブな面を主に担当していて、経営に関しては運営会社に任せていた部分があったんです。活動休止になったとき、そういった経営面の責任を自分では背負いきれなかったことが後悔としてあって。だから休止期間には、経営、法務、知的財産などのクリエイティブに対する「ケア」の部分を強化しなければいけないと思って勉強しました。

一方で、SWORD個人としてブランドとコラボしたり、東コレのようなハイファッションのショーを観に行ったりと、その時がきたときに、今まで以上にアップデートしたものを見せられるように常にイメージを膨らませてもいましたね。

ー見聞を広めて、自分の中のクリエイティビティを熟成させていた?

S-WORD)そうですね。この10数年間は周りを見ずにひたすら自分の中のイメージだけで突っ走ってきたので、いったんそれを置いてみて、まわりを観てみようと。

あとは自分自身が洋服を買うカスタマーとして、友達のブランドの服を買ってみて、「皆が服を買う時にどういう感情を抱くのか」を体感しようとしていました。自分のオリジナルを大事にしていた10数年間と比べると、周りを見ることに徹していたのがこの数年間だったかなと思います。

ー周りを見て、どんなことに気が付きましたか?

S-WORD)例えば他のドメスティックブランドと比べると、あのとき僕らが動かしていた金額や、アイテム数といった規模感はちょっと破格だったんだなって思いました。そんな自分たちのやり方とはまったく違う方法で、今も生き残っているブランドさんもあって。

そういうところは少数精鋭で運営していたり、表現の範囲を特化していたりと、自分たちのやりたいことを時代にあわせて曲げているわけでもなく、フィットさせていく企業努力をしている。単純に無駄がないんですよね。 あのころの自分たちは、ただただ勢いとブームに乗っかってクリエイトに突っ走っていたので、企業としての勉強が足りなかったのかなと思いました。同時に今の時代にブランドをやるなら、過去のあの規模感は絶対にフィットしないなと思いました。

nit_2

▲S-WORD

ーストリートファッションが席巻していたころと現在の状況はだいぶ変わりましたよね。

S-WORD)そうですね。「パイ有りき」のビジネスではなく、浸透させる努力や発信する努力が必要とされてきています。既存のファンに対してのサービスも重要ですよね。一方的な殿様商売ではなく、逆にこちらから歩み寄って、情報を届ける。

ー「ファンサービス」を具体的に言うとどんなことでしょうか?

S-WORD)例えば展示会シーズンや「ファッションウィーク」とかの人が集まるタイミングでイベントを開催したりして、そこにお客さんを呼んでデザイナーと直に話す機会を作って交流を深めたり、路面店に店長として作り手が立って、いろんな方と日常的に近い距離で交流したり。アーティストとしてはライブの時とかにやってきたことでしたが、ファッションブランドとして服を売る立ち場でやってきたかというと、その部分は足りなかったなぁと思います。

とにかく、他のブランドさんのフットワークの軽さに感心しましたね。偉いなぁ!って。根本としては、今までも自分達が欲しいものを軸に服を作ってきたので、そこだけはブレないし、変わらないと思いますが、そこから先の「情報を届ける」という段階においてはフレキシブルにできるかなと。

ーそれはSNSの活用ということでしょうか?

S-WORD)それも含みます。以前のブランドは大所帯だったので、ひとつのことを決めるのに何度も話し合いをしていた。それに比べると、今は単独フリーに近い立場なので、SNSを使えばお客さんと直に会話できるし、今自分が伝えたいことも自分の意思と責任で決定し、すぐに伝えることができるので、積極的にやっていこうかなと思っています。

すべてのキーはSNS。NITXIII始動の舞台裏

ー復活のきっかけとなった「エレメンツ」との出会いについて教えて下さい。

S-WORD)nitraidは活動休止しているブランドなので正規での入手方法が現状ないはずなのに、いろんな手法で買い揃えて全身コーディネートして、一ヶ月に一回、オフ会まで開いている「エレメンツ」なるグループがいる……という情報を得たのも、フェイスブックなどのタイムラインを通じてでした。

活動休止したブランドに対して今でも熱いファンがいるのを知った時、そこに対して自分は何ができるのかなと考えたときに、新しくブランドを立ち上げることぐらいかな、とぼんやりと思っていましたね。

ーということは、「エレメンツ」とはSNSを通じて出会ったわけですね。

S-WORD)そうです。Facebookで意識なく友達申請の許可をしていたので、タイムラインに出てきたんですね。しばらく観察してると徐々にメンバーも増えていって、首謀者が時にアホな写真を撮っていたりするので(笑)、単純に興味がでてきたんです。

なぜなら、自分たちが20代前半のころ、遊びの延長として「それ面白いからやっちゃおうぜ!」と動いて、それが徐々にNITROになっていったノリに近いものを感じてて、今の自分にとっては眩しい姿だったんです。「あぁ、あの時は自分らもこうだったな」って。もし、またブランドをはじめるなら、自分も彼らのような「初期衝動」を思い出してやれたら良いなと思うようになっていました。

nit_3

▲ICHI-ROW

ー「エレメンツ」はどのような団体なのですか?結成までの流れを教えてください。
ICHI-ROW)nitraid自体は、「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND(以降NITRO)のブランド」っていう認識でした。NITROのいちファンとして、NITRO好きが着る制服として、ずっと買い集めていたんです。

昨年、タンスを開けたら昔来ていたnitraidの服があって、懐かしくてInstagram(以降、インスタ)にアップしたら、全然知らない人から「好きなんですか?」って書き込みがあったんです。

ー…ということは、「エレメンツ」もSNS上で立ち上がったもの?

ICHI-ROW)そう、インスタからスタートしたんですよ。エレメンツのリーダーが大のnitraid好きで、彼は一般人なんですがインスタのフォロワーが5000人以上いる謎の人物で(笑)。

彼に興味が湧いて、二人で合わないかって話をしたら「LINEを教えて」と言われて。そこからやりとりをしていたら、いつのまにか彼が「エレメンツ」という名前のLINEグループを作っていたんです。最初は4人くらいのグループだったんですけど、今は60人のメンバーがいます。

ーグループ上ではどんな会話を?

ICHI-ROW)服の質感とか素材、デニムの太さとか。この時期のデザインいいよね、とかですね。

S-WORD)マニアックなカスタマーなんで、きっと作り手の耳に痛い会話をしていると思う(笑)。正直、作り手の苦労も知ってほしいよね、色々兼ね合いがあるんだから(笑)。

ICHI-ROW)いや、今まさに経験してますよ(笑)。でも、ブランドのことだけではなくて、美味しいお店の情報とか恋愛相談とかnitraidの事だけではなく、日々色々なことを話していますね。気がつくとLINEの通知が200とか普通です(笑)。

S-WORD)俺らもそうだったなぁ。別に何の用もないけど暇つぶしに街で集まってたりした。それが今ソーシャルに移った、ということでしょ?

ICHI-ROW)そうですね。エレメンツメンバーは60人いるんですが、東京生まれで東京育ちは僕だけなんですよ。南は広島、北は秋田や青森まで。集まれる人達で月に一回、渋谷で開催されるレイド会で集まっています。

10数年前のクラブからSNSを通じた運命的再会

nit_4

ー二人の出会いを教えてください。

ICHI-ROW)10年前、クラブで初めてお会いして。その時に「世の中生きていくのが辛くなったら、俺んとここいよ!面倒みてやる!」って言われたんですよね。

取材陣一同)おお〜!!

S-WORD)いやいや、ちょっと待って(笑)。……盛ったでしょ?

ICHI-ROW)盛ってないです、盛ってないです。でもぼくはこの言葉をずっと覚えていて。その時は大学生だったので、S-WORDさんとタッグを組めるなんて考えようがなかった。でもいつかまた会う機会があれば何かを一緒にやりたいとはずっと思っていました。

S-WORD)まぁクラブでは会っていたかもしれないけど、ちゃんと喋ったのは今年の8月とかで。Facebookでメッセージをやりとして、その後会って話したんだよね。SNSのタイムラインを見て、だいたいどんなやつか分かっていたから、「ちょっと会ってバスケしようか」って(笑)。で、話してみたら、僕らが今まで提示してきたものに対して、凄く熱いものを持っていたので、何か同じ感覚で通じているやつらなんだろうっていう信頼が最初から感じ取れました。だから、実際に会うのは今日で5回目くらいだけど、メッセージでは毎回長文でブランドについて語り合っています。

ー担当はそれぞれで分かれているんですか?

ICHI-ROW)S-WORDさんは服のクリエイティブ面を担当していて、僕はwebページの制作などNITXIIIの窓口を担っています。今回、CAMPFIREでプロジェクトを立ち上げるという話も僕の発案です。

S-WORD)最初の段階で、心良き支援者からのブランドへの期待が見えるというのは作り手として、とても嬉しいですよね。しかもファンと直接的な関係を持てるというのは、アーティストのモチベーションにとっても、とても大事なことで。絶対それやろうよ!ってすぐに乗りましたね。

ー「エレメンツ」もそうですが、ネットの利点を最大限に利用した再始動ですね。

S-WORD)そうですよ!だって、作る前から60人分の純度の高いカスタマーの意見が聞けるなんて、なかなか無いことなんで。そこが今までの活動にはない強力なバックアップだと思います。コアなカスタマーである皆の意見を加味してアイテムを出すことによって、自分の頭の中だけじゃない、もう少し大きな需要をイメージとして商品がリリースできると思います。

それこそ、アパレル活動休止中に新しいブランドを一緒にやらないか、というお誘いもいただいていたのですが、前回のこともあり、どうもモチベーションが上がらなかった。でも今回は「エレメンツ」の活動を知ったタイミングや、さきほど話したようなICHI-ROWとの出会い、あらゆるすべてのものごとが、まるでパズルのように一致したんです。

この繋がりなら、過去の積み重ねを無駄にしないで、今までの延長線上に、自分があたためていた企画を落とし込む事が出来るので、それをnitraidのアップグレード版である「NITXIII」としてまとめるのが一番良いと導かれたのは必然でした。

日本が世界に提示できるブランドを、もう一度ストリートから発信する

nit_5

ーブランドコンセプト「Strike Out in Neo Tokyo Direction.」に込められた想いを教えて下さい。

S-WORD)新しくブランドを立ち上げるのであれば、「21世紀の新しい東京」というテーマでやろう、とずっとイメージしてきました。海外にプレゼンできる「新しい東京のスタイル」をストリートの世界でやれないか、と。

最近は東京のストリートファッションの細かいアイデアを、海外のハイファッションのブランドのデザイナーの人たちが参考にしているという流れがあるという話を聞いていたので、その流れに対するカウンターとして、東京のストリートの最も実験的な文化を提出してやろう、という想いがあります。

ー「東京のスタイル」とはどんな文化だと思いますか?

S-WORD)東京のスタイルって、全部リミックスだと思うんですよ。バブル以降、世界中のあらゆるスタイルに触れる機会があった僕ら日本人は、自分が好きな要素をカスタマイズして自分流に仕上げる文化を築いてきたんだと思う。このブランドではその最新系をストリート発のブランドとして提示したいですね。

ーICHI-ROWさんは、いちファンからそのブランドの当事者となりましたよね。

ICHI-ROW)「エレメンツ」は、nitraid好きが集まった集団なので、その集団がデルタの始動に携われるというのは、光栄であると同時に責任も感じています。

ー具体的な話でいうと、NITXIIIにおいても引き続き、日本製にこだわるそうですね。その理由を教えて下さい。

S-WORD)職人さんや工場の方々に自分の感覚が伝わりやすいことと、その圧倒的な完成度の高さですね。特にデニムやシャツ等、細かい微調整が要らないものが最初から仕上がってくる可能性が高いといった信頼もあります。

なのでミニマムにクオリティーを求めると日本製が自分にとってはやりやすいんです。「日本が世界にプレゼンできる商品を作る」というコンセプト的にも、ここはずっとこだわっていきたいポイントです。

ICHI-ROW)いろんなブランドのTシャツやデニムを見てきましたが、nitraidを超えるクオリティーのブランドは見たことがないので、ファンだった僕としてもここは絶対にこだわっていきたい部分の一つです。

nit_6

ーこれからのビジョンを教えて下さい。

S-WORD)根本にある「自分達が愛するスタイルを提示する」という思いはブレません。例えばSNSで自分が発する情報に様々なタイミングで皆が触れた時に、感覚として何かがアンテナに引っかかったのなら、そこには縁があると思いますので、それを確かめに僕らのLIVEに来てもらい、一緒に楽しい時間を共有しても良いし、また興味をもって検索してもらったりした時に、ちゃんと、その先の道標が見つかるようにもしていきたいですね。

例えば、HPでイメージの共有が出来るムービーが見れたりとか、そのストーリーが次は音楽アルバムに繋がっていったりとか、俗にいうクロスメディアな方向に展開して、皆さんの生活の一部に入り込めたら嬉しいですね。一緒に人生という名のRPGゲームを進めていくような感覚で、このブランドが何か前に進む為のきっかけになってくれれば、自分としても、やり甲斐があるなと。

ICHI-ROW)僕自身がこの状況にワクワクしている状態なのでまだビジョンは見えて来ないのですが…でも、ファンの人に向けてのメッセージは一言、「お待たせ」ってとこじゃないでしょうか。

S-WORD)ソーシャルで繋がったこの流れはすごく今っぽいし、このやり方がひとつの東京らしいスタイルになるかもしれない。ICHI-ROWとは一ヶ月前にあったばかりなのに、あと一ヶ月もすればもしかしたらブランドが立ち上がってるかもしれないっていうスピード感もいい。僕自身「この形が成功したら何かのロールモデルになるんじゃないか?」という期待もしています。

90年代、ファッションシーンを席巻したストリートブランドの中で隆盛し、そして姿を消したnitraid。

数年間にわたる潜伏期間を経て、新ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして復活を遂げようとしているS-WORDが手にした武器はSNSに留まらず、濃密なファンを仲間にして共作するというスタイルそのものだ。

インターネット時代特有の「速さ」と「シェア」の力を携え、ブランドの形自体もインターネット的にアップデートされた「NITXIII」の動向が、今から楽しみだ。