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ワールドカップ出場!全国に愛された、笑顔のボルダリングインストラクター|クライマー 細野かおり

December 24, 2015

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ワールドカップ出場!全国に愛された、笑顔のボルダリングインストラクター|クライマー 細野かおり
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▲2015年、中国・重慶で開催されたボルダリングワールドカップに参戦している様子

20歳でクライミングと出会い、27歳で念願だったボルダリングワールドカップに出場。そして、28歳で2度目のワールドカップに挑戦したのが、カオリンこと細野かおり選手だ。

ボルダリングの世界上位者の多くが、10代から20代前半という若さで輝く中、一アスリートとして挑戦を続けている。また、フリーランスのボルダリングインストラクターとして、全国各地を巡る活動も行っている。彼女の持ち味は何と言っても、学生時代に鍛えられた筋肉を活かしたパワフルな登り、そして登っている時でも自然とこぼれるカオリンスマイルだ。

「意識してるわけではないんですが、登っていると楽しくて、つい笑ってしまうんですよ」と語り、多くの観客やクライミングを通して出会った人々を魅了している。

年齢・筋肉・フリーランスのインストラクターなど、クライミング界ではとても珍しい要素を兼ね揃えたカオリン。また、2度目のワールドカップ挑戦の際、ボルダリング界では初めてクラウドファンディングを利用したことでも知られている。

常に新しいことに挑戦し続ける、細野かおり選手の魅力をたっぷりお届けしたいと思う。

【挑戦したプロジェクトはこちら!】ワールドカップ出場!クライマーカオリンの笑顔を世界へ!

ボルダリング界には珍しいフリーランスのインストラクター。自ら道を切り開くパイオニア

ーボルダリングとの出会いを教えてください。

カオリン)動物専門学校に通って動物看護師をしていた時、近くにクライミングジムがあって、友人に誘われて始めたのがきっかけですね。元々筋肉質だったこともあり、パワーでゴリゴリ登っていたら「登れるじゃん」っていう達成感が嬉しかったんです。

でも課題のレベルが上がると、パワーだけじゃ登れなくなってきて「登れない!登れるようになりたい!」という、”悔しい”気持ちがドハマりした1番の理由でしたね。筋肉痛が治る前から、すぐジムに行ってました(笑)。

ーそこからドハマりした結果、現在はフリーランスのインストラクターとしても活躍されているんですよね?

カオリン)全国各地のジムから呼んでいただいて、大人にも子供にも講師をしています。女性限定の教室を開くこともありますが、男女の登り方の違いってかなりあるんです。男性に教わるとパワーが足りなくてできないことも、力がなくても大丈夫なやり方を女性目線から教えています。

女性同士じゃないと分からないことも多いので、参加してくださった方からは「やっぱり女性だから分かってくれるんだ」と多く支持してもらっています。当の本人はマッチョなんですけど(笑)。

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▲鍛え上げられた腹筋を見せていただきました!

クライミングでの怪我って着地が多いんですよね。特に女性だと、怖がって落ちた時や不意に落ちた時の着地に反応できなくて足を骨折したり、手首や肘をひねったりすることが多いので、着地の練習をすることもあります。

先日は、手の届かないホールド(壁に取り付けられている手がかり)に向かってジャンプし、次のホールドに飛びつく練習をしてもらいました。レベルが上がってから急にやると怖くてできないけど、簡単なレベルに下げてからチャレンジするとできるんですよ。怖がっていた女性が飛べるようになると「できたー!かっこいいー!」ってすごく喜んでくれて(笑)。

怖さをちょっと乗り越えてみるっていうのも、クライミングの魅力。勇気を出してできることが増えていくと、もっと楽しくなっていくんですよ。

ー基礎から教えていただける機会って、あまりなさそうですよね。

カオリン)クライミングジムのスタッフに聞けば登り方は教えてもらえますが、自分で考えて登る楽しみもあるので、マンツーマンで全部教えてくれるっていう事は少ないと思います。やってみて、できないから何度も登って、それでもできいないから色んな人に登り方を聞いて、その中で自分に合った登り方を模索してって、試行錯誤の繰り返しなんです。

なのでこうすれば必ず登れるっていうものがある訳ではなく、感覚的な事を人に伝えるのって難しいので、教えるのが大変なんです。それでも教えた相手が登れた事が、自分の事の様に嬉しいので、どうにかして登って欲しい、感覚を伝えたいっていう思いで教えています。

ジムの特徴やスタッフ、インストラクター、ジムのお客さんの雰囲気など、行ってみないと分からないことが多いので、そういった点でジム選びは大変ですが面白いですよ。

ー同じように、フリーランスのインストラクターとして活動されている方はいますか?
カオリン ボルダリング専門の方はあまり居ないと思います。山岳ガイド・フリークライミングの資格をお持ちの方は、自然の岩場でのクライミングやロープワークを教えてくれます。

ワールドカップ出場経験者の40歳になるインストラクターの方は、現在のトップアスリートの子達を指導しています。ボルダリング専門のインストラクターというものは確立してもいないし、私の様なフリーランスという人は少ない状況です。

ー細野選手のような恵まれた筋肉は、日本のボルダリング界では稀なんですよね?

カオリン)今年のジャパンカップで1位になった中学・高校生くらいの子たちは、子供の頃から神経系で登っているので、筋肉は全然ついていないんですよ。世界1位の野口啓代選手(以降、野口選手)やトップクラスの選手になると、広背筋や肩、二の腕に筋肉がついているんですが、女性はやっぱり筋肉がつきにくいですね。

それに比べると、私はカヌーやハンマー投げなど、色んな運動をしてきたので元々筋肉があって。筋肉を使って登っていたら、さらに大きくなっていったんです(笑)。

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▲腕の筋肉も素晴らしかったです

ージャパンカップの優勝者、中学・高校生くらいなんですか!?

カオリン)入賞者の平均年齢って、20歳前後で低いんですよ。ワールドカップで野口選手に続いて2位になった子は17歳だったり。この間のアジア大会では、野口選手を抑えて、その子が優勝していましたね。

ー17歳でアジア大会の優勝者ってすごいですね。

カオリン)生まれ持った才能もありますが、経験値が大切な競技なんです。野口選手は26歳で、小学校5年生くらいから登っていて、その頃から努力して培ってきた体の動かし方や経験を活かしているからこそ強いんですよね。

ただ、どんな選手にも得意、不得意の課題があります。不得意な課題の時に、逆にそれが得意な若い子が余裕で勝った、ということも起こり得ます。しかし若い子が勝つのか、と言われるとそういう訳ではなく、時間内に登る回数でも成績がつくので、誰が勝つのか分からない競技なのが面白いんです。

私は20歳から始めたので、そういう若い子たちにこれから勝てるのか、と言われるとちょっとずつ厳しくはなっていますが、私は一本の集中力と大人のパワーで勝負しています(笑)。

2度目のワールドカップへの挑戦。世界と日本との違いとは?

ーワールドカップまでの道のりを教えてください。

カオリン)ボルダリングジャパンカップという大会があるんですが、それが実質の日本一決定戦になっています。女性では上位10位に入れれば、ワールドカップに出場できる権利がもらえるという仕組みです。ただ、権利がもらえても、資金不足やワールドカップでのタイトルに関心がない、という理由で行かないという選手は多いですね。

年々参加する選手は増えてはいますが、実際に行く女性は5人くらい。野口選手がワールドカップに出始めた10年前は、監督や付き添いがなく、1人で海外に行くという状況だったらしいです。私が出場し始めた2年前くらいからは、協会がよりサポートをしてくれて、どの大会にも監督がついて来てくれたり、旅程やホテルの予約をしてくれたり。選手をサポートしてくれる環境はどんどん良くなってきています。

ー今回、ワールドカップに出場されてみてどうでしたか?

カオリン 準決勝まで進みましたが、成績自体には満足していません。中国戦ではもうちょっと順位を上げられたんじゃないかという手応えはありましたね。

ー海外と日本と環境の違いってありますか?

カオリン)全然違いますよ。ヨーロッパに行くと、街中にクライミングの大会のポスターが普通に貼られているんです。女性では、野口選手がワールドカップのボルダリング種目で4度総合優勝したり、男性では、ワールドカップのリード種目において総合優勝など、世界大会で日本人選手が男女共に活躍しているのにもかかわらず、日本ではニュースにすらならないので、ギャップを感じましたね。

アメリカでもジムに行くと、会社帰りのお腹が出てるおじさんが登っているんですよ。30分か1時間くらい登ったら、「ふー。一汗かいたぜ」って帰って行きます(笑)。海外だと一般的なスポーツとして認知されているので、日本の人が仕事帰りにするような、マラソンやプール、普通のジムと同じような感覚でやっているし、環境が整っているんです。

ジムの規模も桁違いでびっくりしますよ!日本で最大級と言われているサイズが、海外では普通のサイズ(笑)。施設の中に子ども専用のクライミングウォールやキッズルームがあったり、面積も大きくて高さもあり、様々な傾斜のクライミングウォールがあります。

子どもから初級者、上級者、誰でも楽しめる施設になっているのが特徴的です。日本のジムだと、混んでいたら登りづらかったりするので、空いていようが混んでいようが、自由にボルダリングができるくらいの広さがあるので、日本とは違った環境を楽しめます。

8年間のクライミング生活。全国に築かれた、人々とのつながり

ーボルダリングを始めてから、印象に残ってるエピソードってありますか?

カオリン)独立したばかりの頃、岐阜のジムでコンペティション運営のお仕事をいただいたんです。無事に終了した時、「今日、誕生日の方が居ます!」というアナウンスがあり、「お客さんの誕生日なのかな?」と思っていたら、私の1万日目の誕生日を祝うサプライズ!しかも発案してくれた人が、初めて働いた栃木のジムのお客さんだったんです。

岐阜のジムの人たちに「お祝いしてくれませんか?」ってお願いしてくれて、メッセージ動画まで用意してくれました。動画は、岐阜県エイトロックのクライマー(&FILM)が作ってくれました。

動画には、埼玉・東京・栃木……色んなジムで出会ったたくさんの人たちからのお祝いメッセージが。嬉しくて嬉しくて…もう大号泣してしまいました。人と人との繋がりをすごく感じましたね。クラウドファンディングをやった時も、応援してくれている人たちが全国にこんなにいるんだって実感して、本当にありがたかったです。

岐阜のジムの方々は、私がクラウドファンディングを始める前に募金箱を作って応援してくれたこともあります。一緒に行動した先々で「ワールドカップに出場するので応援してください」って呼びかけて、募金もしてくれて。

その募金を聞きつけた埼玉の方が「募金箱に入れてください」って、現金書留で岐阜のジムに送ってくださったこともありました。クラウドファンディングへの挑戦を決めたのがこの時で、「ここまで色んな方々にワールドカップ行きを応援してもらえるならやってみよう!」って決心したんです。ただ、出場の準備をしながら、クラウドファンディングに関する準備もやっていたのが結構大変でしたね(苦笑)。

ークラウドファンディングは実際やってみていかがでしたか?

カオリン)クライミングを普段やらない方にも支援していただいて、「今度、クライミング教えてよ」って言っていただけました。今まで繋がりのなかった方々との交流が広がったのは、良い経験になりましたね。

その半面、クラウドファンディングという新しい試みへの批判の声もありました。しかし、クライミング界では、金銭的なサポートをしてもらえるスポンサーがついている人は少ないので、クライミングがどうすればお金に繋がっていくのかなど、確立されていないことだらけなんです。

今回のような一般の方からサポートしてもらう形が取れたことは、今後のクライミング界にとっても良い経験になって欲しいなと思っています。

ー今後の活動について教えてください。

カオリン)年齢を考えると、アスリートとしてやっていくのはキツいかもしれませんが、挑戦していけるのであればこれからも続けたいです。仕事の面では、今までの知識や経験を生かし、インストラクターとして講習会やレッスンを行っていきます。

しかしクライマーとしてまだまだ未熟なので、クライミングの歴史的な背景も含め諸先輩方にご指導していただきながら、ルールやマナー・正しい知識を後世に伝えていきたいです。

それだけじゃなく、クライミングを知らない老若男女に向けた体験イベントとか、クライミングだけじゃない異種競技との複合イベントを開催して、クライミングの認知を広げていきたいです。あと、もっと色んな人との交流を深めていきたい。

全国各地を回って、色んな人と会って、登って。フリーランスのインストラクターだからこそ出来ることを、最大限に活かしていけたらいいなって思っています。フリーランスで続けていきたい気持ちもありますが、いいなって思える場所に巡り会えたら拠点を持ちたいです。

ーいいなって思える所ってどんな場所ですか?

カオリン)今のところ、九州が気持ち良くていいなって思っています。九州は自然の岩場が多くて、岩には困らない良い環境なんですよ。都会もおもしろいけど、森や岩、川に囲まれた田舎に居たいですね。畑の真ん中でごろんっとしたい(笑)。そんな拠点を持ちつつ、呼んでもらえたら全国を飛び回るフットワークの軽いスタイルで、ずっと大好きなクライミングを楽しく続けていきたいなって思っています。

オリンピック競技候補にも選ばれたボルダリングだが、日本ではまだまだ発展途上である様子が伺えた。気軽にできるスポーツであるという認知は、細野選手が始めた8年前よりも上がり、女性や子供でも挑戦する人々が増えてきたという。

認知度が上がってきたのも、細野選手を始め「ボルダリングをもっと広めたい」という人々の想いが年々大きくなってきている証拠なのであろう。そしてこれからも、その強い想いが大きくなっていくことを願いたい。

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▲岐阜のジムのTシャツを着て、終始笑顔だった細野選手

【カオリン(細野かおり)】

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