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『まもろうPROJECT ユキヒョウ~赤外線カメラで絶滅危惧種ユキヒョウを守る~』 木下さとみさんインタビュー

2015年3月10日

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『まもろうPROJECT ユキヒョウ~赤外線カメラで絶滅危惧種ユキヒョウを守る~』 木下さとみさんインタビュー

イラストと歌から始まったプロジェクト

ーまずは今回のプロジェクトの発端を教えて下さい。

木下)姉(木下こづえさん/同プロジェクトの共同代表)が京都大学の野生動物研究センターで希少種の繁殖研究を行う博士で、野生動物の専門家。ずっと前からユキヒョウの魅力を刷り込まれていたんです(笑)。

ユキヒョウって、とても愛らしいんですよ。動物園ではキリンやパンダといったメジャーな動物が注目されがちですが、ユキヒョウの見た目はそれらに匹敵するくらいかわいい。

こんなにかわいい動物が毛皮や漢方薬を目的とした密猟や、過放牧や温暖化による生息地の減少で絶滅危惧種に指定されているのに、知名度の低さからあまり注目を集めていない。この現状に対して何かできることはないか、と思ったことがきっかけです。

ー具体的にはどんなことから着手したのでしょうか。

木下)最初にユキヒョウのイラストと歌を仕事で関わりのある知人に作ってもらって、まずは知名度を上げようと思いつきました。

目や耳で興味を持ってもらうことから始めようと。逆にそうしないと、まだユキヒョウのことを何も知らない方に対して、この深刻な現状を広く伝えるのは難しいと思ったんです。

イラストは子ども向けに見えますが、斑模様の大きさや位置まで正確に表現しているんですよ。

▲リターンのひとつ「ユキヒョウのうた(完全版)」のCD

ー歌、イラスト、そしてサイトもかなり凝ったつくりですね。

木下)広告の仕事に携わっているため、目的を達成するためのプロセスや、対象をどのように見せるべきかを考えるといった点は鍛えられていたかもしれませんね。

これらのツールを使って、調査協力を依頼するために全国各地の動物園へプレゼンテーションしに行きました。

キャラクター化に反感を持つ動物園も珍しくないので、中々理解を得ることが難しいこともしばしばありましたが、めげずに私たちの気持ちを丁寧に伝えていくことで、北海道の円山動物園や、旭山動物園、名古屋の東山動植物園、神戸の王子動物園、そして東京の多摩動物公園などの協力を得ることができたんです。

極寒の山中で10日間の風呂なし生活。ユキヒョウを探す旅

ーその後、モンゴルでの現地調査をされました。活動のようすを詳しく教えて下さい。

木下)ユキヒョウは高山に棲む動物。保全したくても、まずはどこに生息しているかが分からないと何もできないので、現地での調査は必須事項でした。

活動を続けるうちに姉の知人の紹介で知り合った、モンゴルでユキヒョウの保全活動をしているIrbis Mongolian CenterというNGOの代表のムンソクさんにご協力いただき、ユキヒョウの生息地であるモンゴルのバガボグド山へ向かうことにしたんです。

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▲調査地のモンゴル バガボグド山

ーバガボグド山へはどのように?

木下)モンゴルの首都ウランバートルからバガボグド山の最寄りの街であるアルヴェイヒャーまでバスで7時間、そこから宿泊先のゲルまでさらに5時間かかりました。

拠点のゲルからは山道をジープで移動するのですが、車内の天井にクッションが付いているんですよ。おおげさではなく、実際それくらい揺れる(笑)。何度も頭をぶつけながらひたすら耐えました。

ー厳しい寒さの中の山での調査生活…聞いただけで大変そうです(笑)。

木下)山でのメンバーはムンソクさんのほかに運転手のビャオさん、コックのツェギーさんと一緒に行動しました。コックさんのおかげで食事の面では助かりましたが、モンゴルではお風呂に入る習慣がないので、極寒の山中で約10日間お風呂なしの生活(笑)。もちろん生まれてはじめての経験です。

「ユキヒョウに近づいているんだ」という実感があったことで充実した気持ちでしたが、生活面はなかなか大変でしたね。また山ではユキヒョウを狙う密猟者の危険もあって。実際、私たちが滞在していたゲルの近くに石で造られた基地のような痕跡もありました。

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▲密猟者が組んだと思われる石の基地

ー実際に撮影したユキヒョウは、どのように観察したのでしょうか?

木下)ユキヒョウは警戒心が強く、広範囲に生息しています。寒さの厳しい山では人間の足で観察することはできません。そこで必要な機材が、CAMPFIREで支援を募った大きな理由でもあった赤外線カメラ。

まずはこのカメラをどこに設置するかを決めるため、山から山へひたすら歩き、足あとや糞、縄張りを示す尿スプレーの跡を見つけては、このカメラを木や岩にくくりつけていきました。

問題だったのはセンサーの性能上、画面内の「動き」に反応してしまうため、ユキヒョウではないものにもシャッターを切ってしまうこと。動画モードにもできるのですが、「電池の消費が速いからダメだ」とムンソクさんに釘を刺され(笑)、一部のカメラしか動画モードにできませんでした。

帰国後、ムンソクさんから届いた写真のほとんどが何も写っておらず、本当に写っているものがあるのかも分からなかったのでドキドキでした。

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▲写真モードと動画モード、2台のカメラを設置

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▲急斜面の崖に赤外線カメラを設置するムンソクさん

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▲リターンのひとつでもあった赤外線カメラによるユキヒョウの写真

ーその他に現地で大変だったことは?

木下)やはり文化の違いでしょうか。今回の予算の使用目的は、ユキヒョウのカメラの設置だったのですが、調査に同行していただく現地の方への支払いなど、どの程度をどの予算に充てるのか、ムンソクさんとの議論に悩みました。

現地に還元することも保全活動を行う上では大切なこと。移動や宿泊の際の金額交渉は常に戦いのようでした。ただ、ユキヒョウが密猟者による狩りやさまざまな原因から絶滅危惧種であることは現地でも広まっていて、守ろうという意識はすでに根付いていたので理解の土台はできていたと思うし、その意味では恵まれていましたね。

実際、家畜を襲うユキヒョウは発見されたときには殺されてしまうことが多かったのですが、最近は保全への理解から山へ返すケースも増えてきているようなんです。

結果的に有力な目撃情報も得ることができましたし、リターンにもあるユキヒョウのブーティなどを購入することができました。ただ、こちらがオーダーしていない動物のブーティも届いたので、そこはモンゴルらしいなぁと思いましたが…(笑)。

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▲宿泊先の現地住民の方と。

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▲ユキヒョウ柄のブーティ(※リターンでお送りしたものとはデザインが異なります)

見る人を巻き込み、輪を広げていく

ー今回のプロジェクトで、CAMPFIREの仕組みが上手く機能した点を教えて下さい。

木下)もちろん観察用のカメラ代や調査にかかる費用を賄えたことも大きな点ですが、なによりも自分たちだけで進めるのではなく、興味を持ってくれた人を巻き込み、当事者感覚を持ってもらいながら進めるほうがよい良い結果をもたらすはずだと思っていたので、その点でもCAMPFIREの仕組みが上手く機能してくれたと感じています。

また現地でもどのくらいの人数が賛同しているのかを数字で示すことができたので、強力な説得材料になりましたね。ユキヒョウの保全という、自分たちにも終わりの見えないような壮大なプロジェクトに目に見える形で賛同していただいたことで、私たち自身を突き動かす原動力にもなりました。

ー巻き込むことができるのはクラウドファンディングの強みですね。

木下)それに、新しい出会いもあったんですよ。全国のユキヒョウファンの方からリターンの御礼の手紙をいただいたり、オリジナルのデザインの缶バッチを送ってくれる人まで居て。

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▲ユキヒョウファンから送られてきたメッセージとオリジナルの缶バッチ

ーサクセスから少し経ちましたが、現在どんな活動をしているのですか?

木下)現在はムンソクさんから送られてきた写真や動画を選定・編集して、各地の動物園でブースを設けていただき、スライドショーや写真の展示を行なっています。

ユキヒョウの保全を応援していただく人たちがたくさんいることは実感としてありますが、まだまだ全国的な認知があるとは言えないので、より多くの場所での展示をしていく必要があります。今後も活動報告はCAMPFIREのプロジェクト上で細かく行なっていくつもりです。