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シャトーホテル・セントジェームスパリに魅せられた写真家ジミー・コールセン

2015年4月7日

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シャトーホテル・セントジェームスパリに魅せられた写真家ジミー・コールセン

およそ25年以上、写真家として世界のあらゆる建造物との対話を重ねてきた彼にとって、フランスの高級シャトーホテル、セントジェームスパリは特別な存在だ。

曰く、「一目で恋に落ちた」。日本ではほぼ無名とも言える彼の「セントジェームスパリの写真集出版プロジェクト」は、しかしながら見事サクセス。恋の成就の裏側と、建築物と彼の関係についてより深く探るべく、インタビューを行なった。

建物の声にならない声を聞く

ーこれまでの経歴を教えてください。

Jimmy)出身地のワシントンDCで写真家とDJを兼業しながらレコードショップを経営した後、ニューヨーク、次にパリで写真家兼DJとして活動していました。

パリではKENZOとコラボレーションするなど、DJの仕事の比重が大きかったですね。写真を撮り始めた頃はポートレートが中心でしたが、ある雑誌の仕事でアパートの写真を撮ったのがきっかけで、建築物の撮影を始めたんです。

ー独学で撮り始めたのですか?

Jimmy)私にとって建築物を撮ることは人物を撮ることと同じです。建物がそれぞれ人格を持っていると考え、その気持ちを想像しながら撮ることが重要だと思います。

多くの写真家は「こう撮りたい」としか考えませんが、私は建物の「こう撮ってほしい」という声を聞こうと努めているんです。そのために撮影時にビルの周りを歩いたり、遠くから眺めてみたり、近くから見てみたり、いろいろな角度から「ビルの人となり」を知ろうと試みます。

ー他にはどのようなアプローチをしていますか?

Jimmy)基本的に照明は用意せず、自然光をそのまま用いています。そのほうが対象物のそのままの姿を捉えられるからです。

ー建築物の撮影が増えていった理由は何でしょうか?

Jimmy)現在、写真家として撮影する対象のほとんどが建築物です。

特にインテリア撮影では家具や置物などのアレンジが重要なのですが、私は花瓶に挿す花の色の一つ一つに至るまで綿密にディレクションするので、そういったところでクライアントの信頼を獲得していったのだと思います。その結果、必然的に建築物の撮影が増えていきました。

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写真家は、自ら動かないと忘れられてしまう存在

ー日本に移住した一番の理由は?

Jimmy)日本は非常に魅力的で、常にインスピレーションを与えてくれる場所です。例えばパリでは、電車で1時間ほど遠出しても、景色も文化も大して変わりません。

しかし日本なら、新幹線に1時間も乗れば、全く違う街・人・食べ物に出会えます。しかも、公共のサービスの質が高く、治安もいい。鎌倉に住み始めたころ、駅のベンチにお土産を置き忘れたことがありました。

1時間後に気づいてタクシーで戻りましたが、お土産は誰にも触られることなく元のベンチにあったんです。パリだったら3分で失くなっていたでしょう(笑)。ワシントンDCやニューヨーク、LA、パリなどいくつかの大都市に暮らしてきましたが、日本がもっとも快適ですよ。

ー日本に来て1年半経ちますが、住んでみて初めて気づいた良いところはありますか?

Jimmy)美味しいものが安く食べられますね。セントジェームスのマネジャーを大丸のブラッスリー・ポール・ボキューズ(※1)に連れていった際、ランチの料金がコーヒーとデザートを含めてたった2,000円ほどでした。

マネジャーは「ここでは従業員に賃金を払っていないの?どうしてこれほど安くできるんだ?」と驚いていました。パリなら8,000円はするでしょうね。

※1:フランス・リヨン発のフレンチレストランチェーン。気取らない内観と手頃な価格で親しまれている。

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▲セントジェームスパリ支配人のYevsさん

ー日本でも建物を撮り続けているのですか?

Jimmy)もちろんです。仕事で世界のあちこちを飛び回っていましたが、今は日本をベースに活動したいと考えています。ただ、今まで住んできた場所と言葉も文化もかなり違うので、日本で働くことに慣れるのには時間が要りましたね。

今回のプロジェクトは、日本で仕事をしていくにあたって、日本の方々が自分のことをどう思ってくれるか、受け入れてくれるかを知りたかったという側面も大きいんですよ。

ー日本で仕事を獲得するために、具体的にはどんな努力しましたか?

Jimmy)欧米では、ウェブサイトなどで目に止まった写真があれば、大きな企業でも仕事を依頼してくれることがあります。しかし日本ではなかなかそうもいかないので、他にはない強みを積極的にアピールしなくてはいけません。

まず雑誌の仕事に始まり、そこを足がかりに日本での仕事を増やしていきました。写真家というのは自分から動いて発信しないと、次第に忘れ去られてしまう職業ですからね。

支援が資金以上のエネルギーになる

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ー今回セントジェームスを題材にしたのはなぜですか?

Jimmy)セントジェームスは訪れる度に違った印象を与えてくれる不思議な建築物。他とは全く違う魅力を持っています。

実は、このプロジェクトのことは2年以上前から考えていました。その間もある程度撮影はしていたのですが、去年の10月頃にプランを固めて最後の撮影に臨み、さまざまな方の協力のおかげで完成にまで辿り着きました。

ーセントジェームスの建築物としての具体的な魅力を教えてください。

Jimmy)女性建築家であるバンビ・スローンによって、エレガンス、ロマンス、美しさ、そしてセクシーさというパリのイメージが全てつめ込まれています。

セントジェームスは、130、140年ほど前までは気球の発着所でした。バンビはそういった歴史も内装に取り入れているのです。

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ーKickstarter(※2)でもサクセスしていましたね。CAMPFIREとの違いはどんなところでしょうか?

Jimmy)Kickstarterは良くも悪くも、誰でも自分で始めて、進めることができます。本当に誰にでも始められるので、率直に言って馬鹿げた内容のプロジェクトも多い。プロジェクトが乱立した結果、多くの人が、自分が興味を持てるプロジェクトに辿りつけなくなってしまっているのです。

対してCAMPFIREのプロジェクトは、選び抜かれた質の高いものばかりです。また、私が親しみを込めて“キャンプファイヤーオタク”と呼ぶコアな人々が存在します。

私をサポートしてくださっている人の中には、私の他に10人ものプロジェクトをサポートしている人がいたのです。サポーターのほとんどが私の知らない人だったことにも驚きましたね。これこそがクラウドファンディングのあるべき形だと思います。

※2:2009年にアメリカで発足したクラウドファンディングサービス。これまでに8万以上のプロジェクトが成功している。

ー写真集が完成したそうですね。

Jimmy)ちょうど数日前に作業を終えて、今は刷り上がるのを待っているところです。当初60ページの予定が、80ページになりました。制作において特に気をつけたのは、掲載する写真の“流れ”です。

例えばエントランスの写真の次のページに食べ物の写真があると、違和感を覚えますよね。壁に写真を並べては眺め、何度も吟味した上で掲載順を決めています。それと、今回はモデルを5人ほど起用したんですよ。

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ー建築物の写真にモデルというと、少し意外ですね。

Jimmy)あくまでメインの撮影対象は建築物ですが、モデルが存在することで、空間に人間味やロマンティシズムといった新たな雰囲気を与えてくれるんです。

ー近日中に展示会が予定されていますよね。

Jimmy)はい。5月2日から10日まで、表参道のGYREで開催予定です。

ーこの展示会にどんなことを期待していますか?

Jimmy)近くのベーカリーのカップケーキでしょうか。甘いものが大好きなんですよ。…真面目に答えると(笑)、より多くの人に私の仕事を知ってもらえることになるので、今からとても楽しみです。ロケーションも良いので、散歩ついでに寄ってもらえると嬉しいですね。

ー観に来る方にメッセージをお願いします。

Jimmy)展示写真はA3よりも大きなサイズですので、写真のディテールがはっきりと分かると思います。また写真以外にも、建物の雰囲気が感じられる小物等を展示する予定です。

セントジェームスの、いわば東京出張所のような空間にできたらと思っています。本当にたくさんの方々に助けていただいて、ようやく写真展が開催できるところまできました。皆さんのご支援が、いただいた資金以上に私のエネルギーになってることを日々実感しています。

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▲チーズケーキも好きなんだ、とお茶目に答えるジミーさん。

【SAINT JAMES PARIS by JIMMY COHRSSEN】

開催期間:2015年5月2日(土)〜5月10日(日)
時間:11:00〜20:00
会場:EYE OF GYRE
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE3階 / 03-3498-6990

入場料:無料