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日本のこだわり×インドの職人魂。『color of pahi』が完成しました!

2015年8月24日

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日本のこだわり×インドの職人魂。『color of pahi』が完成しました!

異国情緒溢れるこちらの本。インドの手工芸であるブロックプリント生地に包まれた表紙は3種類。よく見ると生地の断面はほつれていて、ページの色や本の厚さもバラバラ。この本は一体……?

これは、ハンドペーパーの手配から印刷・製本に至るまで、その全ての工程をインドで行った書籍『color of pahi』です。

「作る工程も作り手の顔も分からない、大量生産・大量廃棄の時代」に疑問を抱き、「魂を揺さぶるモノづくりをしたい!」と立ち上がった3人の女性により作られました。そのメンバーは、旅するブランド「pahi」のデザイナー緑川りおさんと佐藤くにさん、旅好きカメラマンの原田恵梨さん。

『モノ創りの原点にかえる。旅するブランドpahix旅好きカメラマンが作る旅アート本』プロジェクトがサクセスしたのは2014年8月のこと。

原田さんはこの本の製作のために3度インドに渡り、合計で7ヶ月間滞在。本の完成には随分と時間がかかりました。

また、「資金面だけでなく気持ちの面でも、クラウドファンディングでなければこの本は完成していませんでした」と原田さん。どうやら、インドでのモノづくりは一筋縄ではいかなかったようです。

日本人のこだわりとインドの職人魂が生んだ一冊、『color of pahi』。その完成までの舞台裏を聞いてきました。

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“インドに呼ばれ”、実現したプロジェクト

ーpahiのお二人と原田さんの出会いを教えてください。

原田)数年前、あるイベント会場で、pahiの緑川さんに「女性のカメラマンを探しています。インドで一緒に本を作りませんか?」と声を掛けられました。でも、当時暗室で働いていた私は、インドへ行けるほどの長期休みはもらえないのでお断りしました。

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▲インド・ジャイプルで本を製作した、カメラマンの原田恵梨さん

ー 一度断ったものの『color of pahi』の撮影を担当することになったのはなぜですか?

原田)その半年後、私が仕事を辞めたタイミングで、再び緑川さんからお誘いを頂きました。当時の私の中でのインドは、「行ってみたいけれど機会がない。

『インドに呼ばれる』という言葉もあるので、いつかチャンスがあったらいいな」とぼんやり思っていただけでした。そして、「仕事 + 冒険という形で、ついにインドに呼ばれた!」と思い、引き受けることになりました。

ーインドを訪れた感想を聞かせてください。

原田)インドは「大きな動物園」「日本とは違う惑星」だと感じました。象やラクダ、馬が生活を支えていて、牛・豚・ヤギ・リス・猿・クジャクといった様々な動物が町に溢れています。人と自然と動物が共存しているんです。

しかし、ビジネス面では神経がすり減ることばかりでした。けれど、気付きや学び、喜びや可能性を与えてくれる国でもあります。訪れた人それぞれが違った体験をするので、あなた自身の目で見て体感することをおすすめします。

ーインドは刺激の多い国なのですね。

原田)私は全部で7ヶ月間インドで生活しましたが、知れば知るほど謎は深まります。その無限の謎こそがインドの魅力であり、人々を虜にするのだと思います。インドは国土が日本の9倍、人口は13倍です。さらに、インドは宗教やカースト制度もあります。いろいろな意味で、自分の底を自覚させられる国です。

クラウドファンディングだからできた、インドでのモノ作り

ーインドでモノ作りをした感想はいかがですか?

原田)インドでは、日本の常識は通用しません。「(蚊に刺されたところを指差して)病院で点滴を受けてきたから」「息子が風邪だから」「雨だから」など、想定外の言い訳をされることが何度もありました。

そして、「サインをした契約書」もただの紙切れとして扱われるので、本の完成までに3つの会社を回らされました。

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▲ジャイプルの印刷所

ーその時はどのように対処したのですか?

原田)インドでのモノづくりの経験者とホームステイ先のインド人にアドバイスをもらいました。印象的だったのは、「Eri You have to be top.」……つまり「彼らの上に立たなきゃダメ。『お願いだから仕上げてください』という姿勢を見せるな」という言葉です。

日本では、ビジネスの場に感情を持ち込むことはNGとされています。泣きわめく、怒鳴り散らす、ヒステリーを起こすなんてありえません。でも、インドでは感情を出した方がスムーズに物事が進みました。怒ったり泣いたりすることで熱意が伝わり、相手も本気で向き合ってくれるようになったんです。

ー感情を出すことがプラスになるというのは意外です。

原田)印刷所では、毛穴の奥からマグマが噴き出すほど怒り、感極まって涙しました。「これ以上のハプニングはないだろう」と思ったところがやっと、インドでのモノ作りのスタートです。

あとは、「怒り狂った日本のマダムは手が付けられない」と、ヒンドュー教の“恐るべき戦いの女神ドゥルガー”に例えて「Japanese Durga」と呼ばれるようになりました。そのくらい激しく怒りました(笑)。

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ー騙されたとも言えるような状況があったのですね。印刷を引き受けてくれた会社に毎日通い見張っていたものの、45日後に「紙も工場の手配もできていない」と断られてしまったんです。

びっくりして急遽別の会社に行ったら、そこでは値段を4倍に引き上げられました。私の帰国が迫っていたので、「4倍でも承知するだろう」と思われたんですね。完全に足下を見られました。
誰が騙そうとしていて、誰と誰がグルなのか。もしくは、そもそも騙す気は無いのか。疑心暗鬼になりましたね。

ー 一筋縄ではいかなかったのですね。

原田)友人には、「払ってしまった前金の事は忘れて、別の印刷会社を探しなさい。一度騙されたのに、再び同じ会社と契約するの?」「It’s so Japanese way. 騙されたのに、再びチャンスを与える意味が分からない」と呆れられました。

これには、日本人特有の平和ボケを指摘された気がしましたね。

ー騙されても、本の完成を諦めなかった理由は何ですか?

原田)「全ての工程をインドで」と言い出したのは私です。厳しい状況になると、「紙だけをインドで買い、印刷・製本は日本ですればよかった」と弱気にもなりました。しかし、支援してくださったパトロンの皆様や、日本で完成を待つpahiがいたから諦めませんでした。

あとは、ご支援していただいたお金なので、1円も無駄にできないという使命感がありました。資金面だけでなく精神面でも、クラウドファンディングでなければこの本は完成していなかったと思います。パトロンの皆様の存在がなかったら、諦めて帰国していたかもしれません。

「こんなクオリティのものを500冊作るなら、1冊も作らないほうがましだ」

ーインドと日本の文化の違いがあまりにも大きかったようですね。

原田)生活・仕事・信仰・死生観、その全てが日本と異なり強烈でした。帰国して3ヶ月が経ちましたが、インドで起きたことが自分の人生の1ページだったとは思えないんです。「夢の中にいたのかな。別の誰かの人生だったのかな」なんて気もしています。

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▲印刷所のスタッフ

ー印刷の際にも大きなトラブルがあったとお聞きしました。

原田)特に思い入れのあるページの印刷が美しくなかったんです。社長には「ハンドペーパーに印刷するのだから、これ以上の結果は期待しないでくれ」と言われましたが、「こんなものを作る為に日本から来たんじゃない。これなら1冊も作らないほうがましだ!」と言い返しました。

ー印刷のトラブルはどのように解決しましたか?

原田)「『インド人の仕事はこの程度』と思われて悔しくないの?素晴らしい技術を持っているでしょう?」と泣きながら説得しました。

すると翌日、25年のキャリアを持つベテランのカラーマスターが『color of pahi』の印刷に来てくれたんです。彼の確かな技術でトラブルを解決することができました。

ー原田さんが『color of pahi』の製作に込めた想いが伝わったのですね。

原田)このプロジェクトにかける私の想いを理解してからは、社長も全力でサポートしてくれました。「表紙が3種類あるなら、帯も3種類作らなきゃ」とアイディアを出したり、「インドのクラフトマンの底力だ」とポケットにこだわりのカッティングをしてくれたり。

でも、そのポケットは、まちが浅すぎて何も物が入らないんです……そんな、インド流のオチ付きです(笑)。

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ーインドの職人が原田さんの想いに応えたのですね。

原田)「仲間」と認識されるまでが大変ですが、一度信頼されてからは、温かい心でもてなしてくれました。オフィスの床に布を敷き、社長の奥さんが作ったカレーを皆で食べたこと、休日に仕事を進めてくれたこと、印刷ミスで不足したハンドペーパーを求めてバイクに3人乗りをしたことも。日本ではあり得ないことの連続でしたね。

ー『color of pahi』が完成した今の気持ちを教えてください。

原田)すべての工程をインドで行った書籍が『color of pahi』です。この一冊で「手仕事の温かみ」を感じ、スピード社会やモノ作りの姿を考え直すきっかけになったら嬉しいです。私の人生にとっても、かけがえのない経験となりました。

二度とできないインドでの経験を生かして

ー現在、『color of pahi』はどこで販売されていますか?

原田)代官山蔦屋書店、nostos books松陰神社前、本屋B&B下北沢、恵文社一乗寺店、chahatズシで手に入ります。

ー原田さんの今後のご予定を教えてください。

原田)日本在住のスリランカ人の女性に「インドで本を完成させたとはすごい」と声をかけていただきました。そして、フェアトレードの本製作のお誘いを受けています。苦労の連続でしたが、インドでモノづくりをしたからこそ、次に繋がろうとしています。

そういう意味でも、『color of pahi』が完成してよかったです。インドにはまだ心残りがあるので、リベンジ撮影をしに行きたいですね。

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▲「帰国して3ヶ月ですが、もうインドが懐かしい」と語る原田さん

ー原田さんの目標は何ですか?

原田)帰国する時に、「仕事も学びも遊びも全て『今、生きている』という実感を強く持ち人生を全うしたい。」と思いました。この経験は行動力という武器が自分に備わっていることや、潜在的な闘争心を気づかせてくれました。

これらを活かし自分らしい活動をしていきたい。目標は、前進思考で人にポジティブな影響を与える人物になる事です。まだまだこれからですね。

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▲カラフルな装飾の馬と遭遇した時の一枚

トラブルの連続だった、インドでのモノ作り。日本人のこだわりに、インドの職人魂が応えました。手仕事ならではの温もりあふれる『color of pahi』の完成です。

『color of pahi』のページをめくると、インドの風を感じることができそうです。

【『color of pahi』】

価格:¥3,300(税抜き)

代官山 蔦屋書店 / nostos books / 本屋B&B / 恵文社一乗寺店 / chahatズシ にて販売中。

(Last Update:2016年9月13日)