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押し花アート作品集「flora」制作の舞台裏と、いま表現したいこと|アートディレクター 多田明日香

August 11, 2015

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押し花アート作品集「flora」制作の舞台裏と、いま表現したいこと|アートディレクター 多田明日香

武蔵野美術大学在学中より「花」をテーマに作品を制作し、現在はアートディレクターとして活躍している多田明日香。

彼女が2012年に立ち上げたのが、色鮮やかな押し花を人間の骨の形にかたどった作品群『flora』の出版プロジェクト

500部限定の自主制作だったこともあり瞬く間に完売したビジュアルブックが、今年6月に『flora Bones of pressed flowers』と名を変えてリリースされた。表現の主軸にある「花」との彼女の関係性や、創作に対する思いを伺った。

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▲多田明日香

ー今回出版が決まった『flora』以外の制作物でも、花をモチーフにしているものが多いですよね。そもそもどうしてここまで花がお好きなのでしょうか

多田明日香)別に花ばかりについて考えて生きてきたわけではないんです(笑)。この作品を作る前は、花には自分のお母さんが庭に植えてるもの、というくらいの認識しかありませんでした。

花のすごさや、花と人とのつながりなどの面白さに気付いたのも制作を終えてから。今は「花」とタイトルのつく本はすぐ手にとってしまうし、花を特集する雑誌があれば買っちゃったりしますね。

ーこの作品が花を好きになるきっかけになったんですね。なぜこの作品で花を扱おうと思ったのでしょうか

多田)私の大学のゼミでは、ゼミ生で毎年テーマを決めていて、その年のテーマが多数決で「女性」になりました。それで、私たちがいかに「女性」について知らないかを気づかせるような作品を作ることになって。

そこで「女性の多様さ」に関する作品にしようと考えたのですが、別にこのテーマ自体は珍しいものではない。悩んだ末、女とは何かを定義するのではなく、作品を見た人がいろいろ感じとってもらえるものを作ろうと思いいたりました。そしてそれには花を用いるのがいいのではと考えたんです。

ーしかも、骨で表現していますね

多田)骨にしたのは、化粧や服やアクセサリーといった、女性の身体を着飾るもの、皮膚や肉までもすべて取り払った状態が骨だから。直接的に女性の本質を伝えようと思ったんです。

ーでも、骨そのものは、男の人も女の人もあまり変わらないですよね

多田)私は骨にも女性らしさがあると思っています。骨って、化石になっても男女が分かるじゃないですか。ただ、この作品を女性だと思って観る人はあまり多くないと思います。女性としてではなく「生と死」みたいなテーマで観てくれてもいいかなと。

ー作品を押し花の形に落とし込んだのは、押し花の経験があったらでしょうか

多田)いいえ、独学です。やったことがなかったので、ネットや本で調べました。花を分解して、花びらなどのパーツごとに押し花にしています。

花の形そのままをキレイに押し花にする技術もあって、ちょっと挑戦しましたが…向いてませんでしたね(笑)。

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▲足の骨(左)、手の骨(右)

ー実際、作品はどうやって作っていくんですか

多田)最初は分かりやすい足の部分を作りました。骨の形を調べたあと、お花屋さんに行って、どんな花を買えばその部分を再現できるか考えたのですが、脚の部分に関しては道端で拾ったのも多いです。

大学の近所に生えていたのをこっそりいただいてきたり(笑)。肋骨の場合は細かい線が必要なので、ジャカランダという観葉植物の葉をもぎ取って作りました。いつも骨を想像しながら花屋さんに行っていましたね。

ーひとつひとつパーツで徐々に作っていったんですね

多田)はい。今日はあばら、今日は頭蓋骨、みたいに(笑)。

ー動物なども制作されていますよね。これらは人間を作ったあとの作品ですか

多田)あとです。人や会社に頼まれて作ったものがほとんどですが、女性以外のモチーフで自分が「わぁ、すごい!」と思えるものはなくて。蝶々のように、もともときれいなものをきれいに作っても、「ただきれいなだけなのかも」と思うようになったんです。

だから今後は今お受けしているもの限りで(制作を)お断りするようにしています。このまま続けて「押し花で柄を作る人」になるのも嫌だし、なにより私のモチベーションも霞んでしまう気がして。この作品を作ってからは、人と花の結びつきや、花の存在が常に気になるようになりました。

ー人と花の結びつき、というのは

多田)原研哉さんに書いていただいた「flora」のあとがきに、岡倉天心が「もしも花がなければ、人間は生き死にに随分と不都合を来すだろう」と言ったという引用があって、本当にそうだなと痛感したんです。

人が亡くなったときは花が添えられるし、何かいいことがあれば花を贈る。ふと花が散る瞬間を見たら、その姿を自然と自分に重ねることだってある。人は花に頼って生きているんだと気づかされましたね。

花という字の成り立ちを調べると、「化」のにんべんは人が立っている姿=生、つくりは人が逆さになっている=死ということらしいんです。つまり「人が生き、死んでいくこと」を表している。昔から、人は花と人生を重ねてきた歴史があるのかもしれません。

ー続編の制作の可能性はありますか

多田)もう無いでしょうね。これ以上の作品は作れません。ただ、花に関することは、これからもテーマにしていきたいと思っています。

ーいつ頃もう作れないな、と思ったのでしょうか

多田)すごく個人的な話ですけど、作品を完成させた頃の自分は、押し花しかできることがなかったから、持っている能力を使って「何者かになりたい、有名になりたい」と思っていました。

でも依頼を受けて制作する度に「まぁ、綺麗だな」とか「あげた人も喜んでくれたし、良かったかな」くらいの手応えしかなかった。外から見ればどちらも一緒なんでしょうけど、私の中ではそのころから押し花がただの手法になってしまって、コンセプトのないものばかり作っていました。

それでも自分なりの新しいモチーフとか、あの作品以上のところへ踏み出せないかな、ときっかけを求めて依頼を受けていたんですけど、やればやるほど虚しいというか。

そんなことが積み重なり、この作品はこれで完結させたほうがいいと思うようになったんです。これからはもっと違うことをやろうと思います。

ー「もっと違うこと」というと

多田)こんなにコンセプトについて語っておいてなんですが、最近は、あまり考えないで、単純に自分が可愛いと思うスカーフをつくろうと思っています(笑)。

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(サンプルの紙を見せながら)これは水彩絵の具で描いた絵を、穴あけパンチで繰り抜いて、できた細かいドット型の破片を紙の上に並べ直したものです。

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(もう一方を指しながら)こっちは、描いた絵を一度シュレッダーにかけて、バラバラになった細長い紙の断片を並べ直したものです。

ーいずれも一度完成した絵をバラバラにした上で再構築しているんですね

多田)そうなんです。このビジュアルをデータ化して、90cm×90cmのスカーフにしようと思っています。

ーブランドを立ち上げる、ということですか

多田)そうですね。「La」っていうブランドを作ろうかなと思っています。調べたところ、赤ちゃんが泣いている音階が「ラ」だったり、オーケストラのチューニングも「ラ」で合わせるらしくて、「ラ」ははじまりの音なんだ、と思うようになって。

鼻歌とか一人で歌う時も「ラララ〜」って言いますしね。このスカーフを巻いたら、気分が変わったり、何かをはじめたくなったりするような、そういうものを作れたらいいなと思っています。

ー「La」に関してもコンセプト設計から入っていますが、そういう「根幹の部分」を考えるほうが好きですか

多田)好きですね。私の普段の仕事は広告の制作。クライアントが伝えたいことを、どう世の中に発信するかを考えてデザインする役目があります。伝えたいものごとに合わせてデザインすることが必要なので、そのなかで自分の趣味趣向が邪魔をすることもあるんです。あるときから、そういった他者の意見を考えることなく、自分が好きなもので、しかも誰かが使ったり読んだりしてくれるようなものを作りたいと思いはじめました。

会社の仕事だけに取り組んでいると、心がもやっとしてしまうようで(笑)。もちろん、仕事はいろんなことを調べたり知る機会になるので楽しいですし、精一杯取り組んでいます。でも、ひとりの表現者としての自分を満足させるには、その種の楽しみだけではもの足りない。だからこそ、自由に表現できる何かを作りたかったんです。

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ーこちらは最近の作品なんですか

多田)ここ1ヶ月くらいの作品です。週末などに絵を描いたりしてコツコツ準備しています。

ープロダクトに落としこむということは、もともとやりたいと思ってたことのひとつなんですか

多田)スカーフとかハンカチとか、人が使える=用途があるプロダクトを作りたいとはずっと以前から考えていました。仕事柄、常に意味を求められる環境にあるし、私自身も何かを作るなら「コンセプトがないとダメだ」と思ってきたので、作る意味をずっと考えていましたが、頭でっかちになって、なかなか動き出せなくなっていたんです。

でもあるとき、「難しいことは考えずに、まずは素敵な柄のスカーフを作ってみよう」というくらいの素直な気持ちではじめることにしました。自分が表現したいものを柄にして、それを誰かが身につけて喜んでもらえるようなものが作れれば、それで良しとしようと割り切った。

そしたらその瞬間、作ることがすごく楽しくなってきて。表現したいこと、かつ意味のある何かが作りたくなったら、それはそれとしてまた取り組めばいいか、と思ったら気が楽になったんですよね。

ー今、表情がとても生き生きしていますよ(笑)。最後に、CAMPFIREを使った感想を教えて下さい

多田)まだ「クラウドファンディング」という言葉が知られていなかったときでしたので、最初は正直疑心暗鬼でした(笑)。知らない人を支援してくれる人がいるわけない、やる意味あるのかな?って。でもとりあえずやってみるか、という軽い気持ちで始めたら、予想以上に色んな人が応援をしてくれるじゃないですか。世の中どうしちゃたんだろうって(笑)。

ちょうど日本でFacebookが盛り上がり始めてみんなが投稿に積極的だった時期だったので、たくさんの人にシェアしていただけました。CAMPFIREのようなサイトを見る人って、ネットの情報に敏感な人だけなのかなって思っていたんですけど、地方の整骨院の方とか、歯医者さんなど、実にさまざまな職種の方が支援してくださって。資金面で支援していただけることも重要なのですが、知ってもらうこと=PR効果がすごく大きいんじゃないかなとも感じました。

クラウドファンディングって、発信する場なんだなって。CAMPFIREで支援を募って作った本なんですと紹介すると、それだけで「へぇー!」と興味を持ってもらえることもありますし。私にとっては出発点のようなサイトですね。

現在構想しているというブランド「La」について話しているとき、彼女は何かをはじめる前の高揚に満ちた笑顔をたたえた。

さまざまな制約から解き放たれ、自分の思いに正直に表現できる安息の場所にいるとき、人はこんなにも伸びやかな表情をするのか……。そんなことを改めて知った取材だった。彼女の次のはじまりの音が待ち遠しい。

【武蔵野美術大学×伊勢丹「U-35若手クリエイターによるアート・デザインの現在」】

開催日:2015年8月12日(水)〜8月17日(火)
会場:伊勢丹新宿店
住所:新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店本館7階・催物場
※『flora』の一部パネルと「La」のスカーフの展示・販売が行われます。
※詳細はこちらから。

【伊勢丹新宿店ビューティアポセカリー×多田明日香氏トークショー】

開催日:2015年8月23日(日)
時間:15:00〜16:00
会場:伊勢丹新宿店
住所:新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店本館地下2階ビューティアポセカリー
※書籍の販売・サイン会も同時に行われます。
※詳細はオフィシャルサイトにて掲載予定。

【Nature Creations ‒Flowers-】

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開催日:2015年8月19日(水)〜30日(日)
時間:11:00〜20:00
会場:スパイラルガーデン
住所:東京都港区南青山5−6−23
入場料:無料
※『flora』の一部パネルと「La」のスカーフの展示・販売が行われます。
※詳細はこちらから。